Bloom ─ブルーム─
数分で彼は息を切らしながら戻って来た。

「ごめんね。これを廊下に置きっぱなしだったの思い出して、実はめちゃくちゃ焦ってて。キミの都合も聞かないで勝手にお願いしちゃった」

これ、と言って私に見せて来たのは、シルバーで縁取った黒いスマホだった。

「無くしたらマジで焦る」

確かに。

で、鍵と荷物を渡して、私の役目は終えたんだけど。

再び涼しい風に包まれて外の世界に姿を消そうとする彼に

「どうして鍵持ってるんですか?」

つい、尋ねてしまった。

「あー……」

途端にバツ悪そうに眉を下げる彼。

そして、周りをキョロキョロすると、すっと伸ばした手で私の腕を掴み、外の世界に引きずり込んだ。

「ナイショだよ?」

なんて、耳打ちしながら。

バタンッと再び扉が閉まったけど、私はその音をさっきとは反対側で聞いてる。

彼は私を見て、ニッと笑うと

「先生が落とした鍵拾って、合鍵作ったんだ」

どーだ!と言わんばかりのドヤ顔で私に向かって親指立てて見せてきた。
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