Bloom ─ブルーム─
やっと聞こえた健さんの声に、私は思いきり怒りをぶつけた。

『泣いてないじゃん』

なのに、冷静な声がサラッと返ってくる。

「どこで見てるの?」

『マック』

そこで、私の携帯が力尽きた。

すぐ隣のマックに視線を向けると、その窓際に座る健さんが寂しそうに笑ってるのが見えた。

さっき友里亜と座ったのと同じ場所。

私は携帯をポケットにしまうと、真っ直ぐ健さんの元へ向かった。

そして空いてる彼の目の前の席にムスッとしたまま腰を下ろす。

「なんか飲む?」

ホットコーヒーを口にしながら、妙に落ち着いてる健さんが口を開いた。

「コーラ」

「はいはい」

私の注文に苦笑いしながら健さんは立ち上がる。

「あと、ポテト」

「はい」

「それから」

「まだ食うのかよ?」

呆れた声を発する健さんをギロッと睨むと、彼は肩をすぼめた。

「ダブルチーズバーガー」

「はいはい」

注文の品を買いに行った健さんは数分でトレーを持って戻って来た。

「よくこんな時に食えるね」

ポテトを「あつっ」て言いながら口に運ぶ私を見て、健さんはやっぱり呆れ顔。

「こんなときだから食べなきゃやってけないんです」

「あー、やけ食い?デブるよ」

彼女の華奢な肩が頭をよぎった。
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