Bloom ─ブルーム─
「女の子はちょっとぽっちゃりくらいで、ちょうどいいんですよ」

あの人は、きっとやけ食いなんかしないんだ。

だって、“可愛い”から。

「はいはい」

実は申し訳なく思ってるんだろうか?

マックも奢ってくれたし、私の言い分にあまり突っかかってこない健さん。

なんとなく、対応に困る。

でも、もしかしたら、私以上に胸の痛みを抱えているのかもしれない。

「あの後、どうしただろうね、あいつら」

全然やみそうにない雨を眺めながら、健さんはぽつりと言った。

「さぁ」

「周りから囃し立てられて、キスとかしてたりして」

「かもしれないですね」

「なんだよ。そのつれない返事。全然張り合いないんだけど」

そう言う健さんの声に、張りなんてまるでない。

私は、まだ口をつけてないダブルチーズバーガーを差し出した。

「余計なこと考えるヒマあったら食べててください」

どちらかが慰め役になれればいいんだろうけど、私より落ち込んでると思える彼の目の前にいる私も、実は相当へこんでる。

今は笑える話もできないし、元気づける言葉だって出てくるはずもなかった。

でもさっきの事を思い返しても黙ってても、結局共倒れだ。

2人して、号泣してしまいそう。

1人でいるよりはずっとマシだけど。

「……はい」

素直に受け取った健さんには、多分味なんてわからないだろう。

チーズ、ダブルで入ってるのに。
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