Bloom ─ブルーム─
身振り手振りで夢中になって話していた彼は

「今はどこにでもある普通の景色なんだけど、ここに立って目を瞑るだけであの景色が蘇るんだ。すげー鮮やかにさ」

そう言うとそっと瞼を閉じて大きく風を吸い込んでいた。

どれほどの景色だったかは、私にはわかり得ない。

彼の話ぶりからして、それは本当に綺麗だったんだろうけど。

でも、私には、そこに溶け込む彼がいてこそ、その景色が何倍にも輝いて見えるような気がした。

彼の言う紅葉より、大きな虹より、どんな飛行機雲より。

それくらい、瞳をキラキラさせて、本当に嬉しそうに話してくれる姿に思わず感動してしまったんだ。

「ここに来ると、すっげー曲を書きたくなるんだよね」

「作曲?するんですか?」

「うん。一応バンド組んでて」

「はい、さっき、見てました」

「本当?なんか照れるな。まだまだ全然なってないんだけどさぁ。でも歌うのはすっげー好きだから。

いつかさ、絶対ビッグになってやるよ、俺。ここ卒業したら東京行って。こんな町で終わらせたりしない。

だから、この鍵使ってここでいつも歌詞書いてるんだ。たまに思い付いた曲をスマホに録音したりして」

「録音?」

「うん。俺、楽譜書けないから、思いついたメロディーをここで録音して、ドラムやってる奴に書いてもらってるんだよね」

「そうなんだぁ」

なんか、すごい。

作曲とか、東京とか 、私には夢のまた夢みたいな話。
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