Bloom ─ブルーム─
「そうだ、こ、コンタクトレンズ買うんでした。コンタクト屋さんに行かなきゃ」

コンタクトってどこで買えばいいのかも正直わからないけど。

とりあえず目の前の地下街へ逃げるが勝ちだ。

でも、背中を向けたまま走り出そうとした私に気づいたのか、1歩を踏み出すより早く、私の前に立ち塞がる先輩。

「里花……」

そして、私の顔を見て、多分後悔してるはずの彼。

これを見られたら、もう誤魔化せない。

「どうして……?」

どうして逃がしてくれなかったの?

瞳いっぱいの涙は、こぼれ落ちるのを待つだけ。

乾かすなんてもう無理。

たった1度の瞬きで、きっと簡単に溢れてしまう。

「……友達でもいられなくなっちゃうよぉ」

私はそれが一番怖かった。

好きだけど、『好き』というその言葉を避け続けてきたのは、友達という枠内にいたかったから。

その隣がナナさんの定位置になったとしても。

少し伸ばせば手の届く距離から、先輩を見ていたいっていう私のわがままがあったから。

でももう、無理だ。

どんなに頑張ってももう元には戻らない瞳が、言葉にする前に語ってるんだから。

もう、友達にも戻れない。

ううん。

きっと最初から友達でいるなんて、無理だったんだ。

あわよくばなんて思わないからとか、邪魔したりしないからなんて言っておきながら。

私はずっと友達以上の気持ちで先輩を見てたんだもん。

最初から、ずっと……。










「先輩……好き」












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