Bloom ─ブルーム─
「アイツ、片方の揉み上げないの知ってる?」

「揉み上げ?」

「そー。あ、いたいた、朝美!これ、花子!」

健さんは今度はたまたま通りかかった2年の女の子を呼び止めると、私を指差した。

気づいた彼女は面白いオモチャを見つけたような顔をして近づいて来る。

そして、私の顔を両手で掴むと、自分の方に無理矢理向かせた。

グキッと首が鳴る。

な、な、なんなの?

「本当だ。待ち受けの子」

私の顔をマジマジと見つめるその彼女は、ライブハウスで見かけた顔。

てか、健さん、本当にあの写真待ち受けにしちゃってるんだ?

「ふーん」

彼女は品定めするように私を見ると

「お子しゃまだね」

なんて言って、笑いだした。

なんとなく、このバカにする感じが健さんに似てる。

実際健さんも「だろ?」って一緒に笑い転げてた。

一通り笑い終えると、彼女は私の肩に腕を回し「お仕置きしといたから」って耳打ちして、ニヤリ。

「コイツだよ、大樹の揉み上げ剃ったの」

健さんがまた笑った。

もしかして、学祭の日に丸坊主にするよって脅してた人かな。

“お仕置き”って、どういうことだろう?

ポケットから取り出したバリカンのスイッチを入れ、ブイーンッという音を聞かせてニヤリとする彼女は──

確かに、大樹先輩をオモチャ扱いしてるよう。

「大ちゃんに気ある子はいっぱいいるけど、あなたみたいに媚びない子は嫌いじゃないよ」

そして、「またなんかあったら、お姉さんに相談しなさい。今度はここに剃り込み入れてあげるから」って、オデコの生え際を指差した。
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