Bloom ─ブルーム─
「次は丸坊主でいいよ」

健さんが言うと

「モヒカンもいーよね?」なんて笑いながら、じゃーねと手を振って帰って行く彼女。

なんだか、嵐みたいな人。

「この間、紙飛行機飛ばした日にさ、朝美に里花の話したら、無防備なアイツの揉み上げあっさり剃ったんだよね。

ウケた。大樹、キョトンとしてて、落ちた髪の毛見て超慌ててたよ」

揉み上げ剃られて焦る先輩の顔を想像すると……可愛い。

でも、私の話?

私の失恋話が、大樹先輩の周りで語られてるのかと思うとちょっとやだ。

「今度は朝美にバリカン借りて、お前が剃ってやれよ」

「そんなの、無理です」

健さんはふーっとため息をつくと、鞄の中からキレイに折り畳まれた紙を取り出し、私に差し出してきた。

そこには“退学届”と書かれている。

「健さん、退学するんですか?」

「俺じゃないよ」

じゃあ、誰?と聞こうとしてハッとした。

まさか……。

「あいつの机ん中から偶然見つけて、ナイショで預からせてもらった」

「大樹先輩……の?」

「うん」

「なんで?なんで退学なんて?」

そんなの急すぎる。

会うのは辛いけど、でもこの学校のどこを探しても大樹先輩が見つからなくなると思うと、胸が締め付けられるみたいに痛む。

そんなの、やだ。

「一昨日、あいつ、兄貴になったんだ」

「赤ちゃん?産まれたの?」
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