Bloom ─ブルーム─
「心配かけて、ごめんね」
「ううん」
杏奈との電話を切って、やっぱり気になった私は、バスに乗り、友里亜の家に来ていた。
杏奈には『ラーメン嫌いだし!』と激怒されたし。
そんな強い杏奈だから、きっと立ち直れるはず。
でも、友里亜はそんな簡単に切り替えなんかできるはずないから。
きっと自分だけ責めて泣いてるんじゃないかと思った。
案の定、目を真っ赤にして、俯くばかりの友里亜。
「山本先輩と、別れたの?」
私が聞くと、まだ乾いていない瞳からまた涙がこぼれ落ちた。
「私は勇くんが好きで、一緒にいれて幸せだったの。なのにね、なのに、毎晩夢を見るんだ」
「どんな夢?」
「すごく悲しい夢。泣きながら誰かを呼ぶんだけど、その人の背中しか見えなくて、私はその背中をずっと追いかけるの。
でもその人は全然振り返ってくれなくて、どんどん遠くに行っちゃうんだ。
それで、寂しくて悲しくて目が覚めるの」
「うん」
「何度寝ても同じ夢ばかりで、毎朝泣きながら目を覚ましてる」
「うん」
「私ね、杏奈ちゃんと直人がうまくいきそうで、良かったって思ってたんだよ?2人を応援したいし、笑っててほしいし、」
「うん」
「なのに、2人の距離が少しずつ近づいていくのを見てたら、苦しくて」
友里亜はポロポロ涙をこぼしながら、悔しそうに首を振っていた。