Bloom ─ブルーム─
「でも、バカっぽいけど、中身は思いやりのたくさん詰まった人でさ。

本当なら1年でバンドやってるなんて調子こいてるって目つけられるとこなんだけど、そういうのも安田先輩がこっそり守ってくれてたんだ。

音楽やってる奴はみな兄弟だ!とか言って。

お陰で今でも、ライブやると3年の先輩から逆に応援してもらえるんだよね。

だから、東京行くって言った時は正直ショックだったよ。

でも、弾ける楽器って小さい頃から習ってたピアノぐらいないのに、『俺はシンガーソングライターになる』って、ギター片手に出ていったからさ。

最後まで笑わしてくれる人だって、見送りながらみんなで大笑いしたんだ。

だってさ、ギター弾けないんだよ?。くくくっ」

それで、結局帰ってきたんだ?

でも、学年問わず誰とでも仲良くする大樹先輩達は、きっと安田先輩の意志を引き継いでいるからなんだ。

ドラムの彼女の弟。

会ったことないけど、あの時灰皿に群がる黒山を追い払ったお姉さんと同じで、きっとちゃんと周りを見つめてる温かい人なんだろうな。

「で、帰ってきて第一声が『大樹、東京は冷たいぞ』」

モノマネのつもりだろうか。わざと声を変えて、低く掠れさせるけど、本人を知らないから全然伝わらない。

でもその時の事を思い出したように、グハハッと笑う大樹先輩。

楽しそうな先輩に、つられて私も笑ってしまった。
< 257 / 315 >

この作品をシェア

pagetop