弁護士先生と恋する事務員
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「それでは次回、予約の時間にお待ちしてますね。」
相談が終わった男をドアの入口まで送り、頭を下げた。
やっと帰ってくれるとホッとした、というのが正直な所。
破産という事になれば少なからずいろんな方面に迷惑をかけるというのに、
始終軽薄な態度の男に、私はすっかりイライラしていた。
ドアを開けて、男が出ていく寸前
「あ、そうだ。ちょっと道を教えてほしいんだけど」
「はい?」
急に男に手を握られて、強引に廊下へと連れ出されてしまった。
「あ、ちょっと、困ります!」
ぐいぐいと手を引っ張られ、廊下の奥にあるもう一つの階段まで連れて来られた。
「“伊藤詩織ちゃん”か。彼氏いるの?」
私のネームプレートを読み上げた男は
廊下の壁に片手をついて、囁くように話しかけてくる。
(なにコイツ!やだっ…… 気持ち悪いっ!!)
やっぱり男なんて大嫌い!先生以外の人に触られたくない。
虫唾が走るとはまさにこの事なんだな。
「やめてください。人呼びますよ?」
「すげーかわいい。タイプなんだって。アドレス教えて?」
「やだっ」
(先生!!)
―――心の中で、先生に助けを求めた瞬間。
「お客さん、うちの女の子に手ぇ出したら、シメるよ?」
先生が、男の襟首を掴んで
凄味のある笑顔で男の顔を見据えていた。