弁護士先生と恋する事務員


そして運命の月曜日。


青い空、白い雲。


歩きなれたいつもの商店街を、

強い日差しにも負けないぐらい、私は気合を入れて歩いていた。


部屋の中はピカピカに掃除したし、今夜のメニューもばっちりだ。

髪はツヤツヤに光っているし、メイクも気合の入ったナチュラルメイク。



今日はがんばろう。

一生分の運を使い果たしてもいいから、

先生に好きって言うんだ。


~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*


ガチャ。


ん、あれ?


事務所のドアに鍵を差し込んで回しても、いつものように開かない。

おかしいな。


もう一度逆に回すと、今度は開いた。

週末、施錠し忘れて帰ったとか!?


誰だー、最後に事務所出たのは!


なんとなく胸のザワつきを感じながら足を踏み入れると


いつもは誰もいない事務所に、もうすでに人影があった。



―――しかも三人も。



ガラスブロックから差し込む白い光の中にいたのは


剣淵先生と、よく似た先生のお父さん。


そして、もう一人、見た事のない女の人が立っていた。



ふんわりとした緩い巻き髪、適度にボリュームのある女らしいスタイル。

大きくてキラキラと輝く瞳、色っぽくぽってりとした唇。


それは、完璧と言っていいほどしなやかで美しい、大人の女性だった。



―――こんなにきれいな人、テレビや雑誌でしか見たことがない。



ドキドキドキドキ……


ざわめく鼓動が胸に刺さって痛みさえ感じる。


先生と並んで笑い合うその人は、私の入る隙間なんて一ミリも残されていないほどお似合いで―――



入口で硬直している私に気づいた先生は、


「おい、詩織。どうした、こっちに来い。」


私はガチガチに緊張してしまって、それでも何とか近づいて


無理やり笑顔を作って、二人に挨拶をしたのだった。
 
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