弁護士先生と恋する事務員
クウン、クウン……
サンドイッチを全部食べ終えたパンダが、私と先生の周りを物欲しそうに鳴いて回り始めた。
はっ、とお互い我に返って、先生の手がするりとほどける。
先生は顔を上げると、私の顔を見てふと、ニヤリと高慢な笑みを浮かべて言った。
「お前になんか奢られてたまるか。ウナギの一杯や二杯、俺が食わしてやる、ついて来いっ」
先生は私の手首を掴みなおすと、商店街の道へ向かって走り出した。
「わ、わ、ちょっと待って!」
「ブチ、また明日な!」
「ちょっと、先生ー!」
ほとんど引きずられるように手を引かれ、私と先生は真夏の真昼間
ウナギ屋ののれんをくぐったのだった。
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「おばちゃん、うな重特上二つ!!」
「あいよ!」
席に着いたとたん、きりっとした顔で注文する先生。
(急に元気になっちゃって、なんなの…)
ハア、ハア、ハア……
いきなり走らされたから呼吸がなかなか整わない。
「詩織、ここの特上はなあ…」
ハア、ハア、ハア……
「は、はい……」
先生は息も絶え絶えな私を気にも留めず、得意げな顔をして耳元で囁いた。
「……ご飯の間にも、ウナギが挟まってるんだ」
「…そ、そうなんですか……」
「すげえだろ」、そう言って白い歯を見せてわはははと笑う先生。
(無理してから元気出してる?)
そう思ったけど、口には出さずに
私は素直にうな重特上を先生と一緒にガツガツと食べた。