弁護士先生と恋する事務員

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月曜の朝。


私はいつものように、朝の商店街を歩いていた。


「おばちゃん、おはよう。」


「おは……??」


ん?


毎朝挨拶を交わす、おじちゃん、おばちゃん達が目を丸くして私を凝視している。


「いやあ、誰かと思ったら詩織ちゃんかい。びっくりしたわあ。」


(そ、そんなに変わったのかな、恥ずかしい…)


「すっかりきれいなお姉さんになっちゃって。」


「そ、そう?」


急に食いついた私に、うんうん、とニコニコほほ笑んでくれるおばちゃん達。



少しだけ明るい色を入れた髪は、トリートメントの効果でツヤツヤになった。


メガネをやめて、重ね塗りしたアイシャドーとマスカラで印象的な目元に。


肌は透明感のあるパウダータイプのファンデーション、


若さをアピールするためのピンク色のチーク、


唇はヌードピンクとちょっぴりのグロスであっさり目に。



ジュリアさんがアドバイスしてくれた通り、早起きして頑張ってきたんだ。

きれいって言われると嬉しいな。


「いままでちょっと地味だったかなと思って、メガネやめてみたの。ありがとう。」


照れながらお礼を言うと、


「うんうん、すごく素敵。」


おじちゃん、おばちゃん達は口々にそう褒めてくれた。




ホッとして、事務所へ向かう足取りも軽くなる。


後は―――



先生、熱は下がったかな。

本当は休みの間もお見舞いに行きたかったけど…



『あんま男に優しくすんな。じゃねえと――


 ――好きでもねえ男に、ヤラレちまうぞ。』



あの後でさすがに押しかける勇気はなかった。



たぶん先生、気にしてるよね。


ああ見えても優しい人だから。


でも私が気にしていたら、先生はもっと気まずいはず。


事務所で会ったら、いつも通り、いつも通り。




私は自然にふるまう練習をしながら、よつばビルに入って行った。

 

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