白紙撤回(仮
「山科君、どんな調子?」

「ほぼ出来た。テストアップするから確認して?直すとこあったら直す」

「へぇー、さすが仕事が早いね」

「フツーだろ」

素直に誉められた気がしなくて俺は話を逸らした。

「つーか腹へったんだけど」

「じゃ、遅くなったけど昼飯食いに行こうか。帰って来てから確認するよ」

「よし、メシいこ!」

俺は椅子から腰を上げた。
ここでやっと昼飯にありつける。

工房を出て少し歩いた所にカフェがあり俺達はそこで昼飯を取ることにした。
市ヶ谷はよくこの店を昼飯で利用していて、昼のピークを過ぎた時間に行くらしい。

店に入ると思った通り空いていて俺達は光の差す窓際の席に座った。
水が出され、メニューを眺めていると市ヶ谷から話を振られた。

「そう言えば休憩時間とか決めてないんだけど山科君の為に決めた方がいいね?」

「いや、お前に合わせるから別にいいよ。きっちり会社みたいにしなくてもよくね?今まで通り適当にさ」

「そう?ぶっちゃけ仕事の時間とか休みも決まってないんだよね」

「自由業だもんな。いいよ。それも合わせる」

「本当にいいの?勤務日数と勤務時間は希望があれば聞くよ?」

「今の俺に希望もクソもないだろ」

俺の答えに市ヶ谷は笑ってポケットから煙草とライターを取り出した。
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