白紙撤回(仮
工房に帰ると市ヶ谷はテストアップしたページを確認してオッケーを出した。
トップページを少し調整していいか尋ねると快く了承してくれた。

再び作業に戻る。
市ヶ谷は相変わらず黙々と作業していた。

あれだけのクオリティーのラブドールを市ヶ谷はどうやって仕上げるのか……。
何の作業をしているのか単純に興味があり俺は尋ねた。

「なあ、それ。さっきから何してんの?」

「植毛……」

近くに行き覗くと、市ヶ谷は器用にピンセットを使って頭だけの人形に睫毛を植え付けていた。
完成品を見ると上下にしっかりと睫毛が植え付けられていて実に綺麗だ。

「……細かいな。それ抜けたりしねぇの?」

「コーキングするから大丈夫。手間がかかるけどリアルになるだろ?」

「凄いな……お前、職人じゃん」

「そうですけど?山科君にもそのうち制作の方も手伝ってもらうから」

「マジですか?」

「マジですよ」

軽口を聞きながらも市ヶ谷は手を止めない。
俺は戻ってパソコンに向かった。
器用でない俺に制作の手伝いは正直、無理そうだ。
とりあえず今、やることをきっちりやるしかない。

その後、黙々と作業を続け微調整も終わり、更新ページの最終確認を市ヶ谷にしてもらった。
そして本番サーバにアップして今日の仕事は終了した。

この日の作業は六時半を過ぎて終了した。
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