たなごころ―[Berry's版(改)]
どれ程、ふたりはそうしていただろうか。17時半を迎える鐘が、動物園に響いた。沈みかけた日によって、園内が橙色に染まってゆく。園内にいた人々の数も、随分減っている。ぼんやりと、その様を眺めていた笑実に、漸く箕波が声を掛けた。
「よし。そろそろ行くか」
「え?どこへ?帰りますか?」
勢いよく起き上がり、箕浪は両手を空へ向け上体を伸ばす。戸惑う笑実に構うことなく。笑実を手を取り、箕浪は少し坂になっている園の奥へと足を進めた。
※※※※※※
窓から見える景色に、笑実は声を上げた。先ほどまでの橙色の空が、深い暗闇に変わり、ポツリポツリと灯り始めた明かりがそこに彩を加える。
箕浪に引きずられるように。笑実は動物園に併設されている遊園地にある観覧車へ来ていた。確かに、観覧車内の限られた空間ならば、他人の視線も感じることはない。タダひとつ。問題があるとすれば――。
「箕浪さん。普通、観覧車に乗るときって向かい合わせに乗りませんか?」
「さあ、普通がどうかは俺は知らないけれど。俺はここに座りたいから座ってるだけだ」
「よし。そろそろ行くか」
「え?どこへ?帰りますか?」
勢いよく起き上がり、箕浪は両手を空へ向け上体を伸ばす。戸惑う笑実に構うことなく。笑実を手を取り、箕浪は少し坂になっている園の奥へと足を進めた。
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窓から見える景色に、笑実は声を上げた。先ほどまでの橙色の空が、深い暗闇に変わり、ポツリポツリと灯り始めた明かりがそこに彩を加える。
箕浪に引きずられるように。笑実は動物園に併設されている遊園地にある観覧車へ来ていた。確かに、観覧車内の限られた空間ならば、他人の視線も感じることはない。タダひとつ。問題があるとすれば――。
「箕浪さん。普通、観覧車に乗るときって向かい合わせに乗りませんか?」
「さあ、普通がどうかは俺は知らないけれど。俺はここに座りたいから座ってるだけだ」