たなごころ―[Berry's版(改)]
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 風呂から上がった笑実は、箕浪によって運ばれた道を辿る。
 箕浪に連れてこられた2階室内は、ふたつに区切られていた。大きく厚いガラスで出来た壁によって。双方から室中が見えないよう、それにはブラインドが下ろされている。1階の、あの店舗と比べると、随分近代的な作りであった。床も、壁も。そして先ほど使用していた風呂場も。高級感を感じさせるものでもあったからだ。

 笑実はブラインドの下ろされた壁の端にあるドアを抜け、隣室に顔を覗かせた。中央に設置されている大きなソファーに向かい合い座る、箕浪と喜多の姿を見つける。笑実の姿を認めた箕浪が腰をあげ、喜多が笑実に手招きをした。逆らうことなく、笑実は喜多の向かい側に腰を下ろした。
 テーブルの上に用意してあったポットから、喜多が湯気の立ち込める紅茶をカップへ注ぎ、それを笑実の前へ差し出す。喜多の「どうぞ」との言葉に、笑実は小さく頭を下げてから、カップを両手で掬い上げた。一口。それを含んだところで。箕浪が小箱を手にソファーまで戻ってくる。
 箕浪が腰を下ろしてのを確認してから。笑実はふたりに頭をさげた。

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