たなごころ―[Berry's版(改)]
「ありがとうございました。お陰様で身体も十分温まりました」
「いえいえ、良かったです。女性は身体を冷やしてはいけない。私がその場に居合わせたとしても同じことをしたでしょう。箕浪にしては上出来でしたよ」
「誰に言ってるんだ。上出来なんて優しいものじゃないだろう。紳士だ、紳士」
箕浪の乱暴な言葉に、喜多が気にする様子はない。片方の眉を上げただけの反応に留め、言葉を続ける。
「それで。箕浪の話によれば、店の前にずっと立っていたそうですが。……もし、差し支えなければ。少しお話聞かせていただけませんか?」
眸をぐるりと一周させてから、笑実は重い口を開く。
「……どうも……二股を掛けられていたようなんです。その現場を見てしまって。信用していた分、ショックで――いや、怒りが湧き上がったと言ったほうがいいですかね」
喜多と箕浪が一瞬視線を合わせる。両手の中に収めたカップに視線を落としている笑実は、そのことに気付かない。喜多が、少し前に身体を乗り出す。
「いえいえ、良かったです。女性は身体を冷やしてはいけない。私がその場に居合わせたとしても同じことをしたでしょう。箕浪にしては上出来でしたよ」
「誰に言ってるんだ。上出来なんて優しいものじゃないだろう。紳士だ、紳士」
箕浪の乱暴な言葉に、喜多が気にする様子はない。片方の眉を上げただけの反応に留め、言葉を続ける。
「それで。箕浪の話によれば、店の前にずっと立っていたそうですが。……もし、差し支えなければ。少しお話聞かせていただけませんか?」
眸をぐるりと一周させてから、笑実は重い口を開く。
「……どうも……二股を掛けられていたようなんです。その現場を見てしまって。信用していた分、ショックで――いや、怒りが湧き上がったと言ったほうがいいですかね」
喜多と箕浪が一瞬視線を合わせる。両手の中に収めたカップに視線を落としている笑実は、そのことに気付かない。喜多が、少し前に身体を乗り出す。