たなごころ―[Berry's版(改)]
 白いレースのワンピースから惜しげもなく、美脚を晒し。ピンヒールを履くことで、更にそれを強調させて笑実を見下ろす鈴音。彼女の開口一番の台詞を聞き。笑実は、彼女をここへ誘導したのは正しかったと。改めて感じていた。
 嫌悪感を顕に、笑実は口を開く。

「ドラマや小説なんかのお金持ちは、なんでもお金で解決しようしますけれど。まさか、現実世界で、自分の耳で。その台詞を聞くことになるとは思いもしませんでした」
「目障りなのよ。大体、いい年をして、身の程を弁えるって事を知らないの?貴方は」

 笑実は、自身の中で。何か大きく、太いモノが切れる音が聞こえた気がした。
 先日、自分が箕浪に対し口にした台詞と。今しがた鈴音が口にした台詞に、差ほど違いはない。だが。他人に、鈴音に言われる謂れなど、笑実にはないのだ。
 無言で、笑実はベンチから立ち上がる。少し離れた場所に居る、鈴音との距離を詰めるために。笑実の行動に驚き、一歩後退した鈴音を追って。笑実も更に一歩を詰め寄る。



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