たなごころ―[Berry's版(改)]
「ああ、箕浪のあまりの変わり様ったら、ないな。髪を整えた姿を見たときも驚いたけれども。猪俣さんの力は凄いよ。いや、本当に凄い」
「……私は何もしていません」
「わかったよ。じゃあ、パーティは箕浪に任せる。猪俣さんも、アルバイトの一環と思ってよろしくお願いします」
「……分かりたくありませんけれど。アルバイトなら仕方ありません」
笑実の返答を聞き、満足げに。数回頷いて見せた箕浪は、ひどく嬉しそうに笑実を見つめる。頬の赤みを隠すように、笑実はカップを口に当てる。だが、次に来るだろう箕浪の甘い言葉を。どこかで期待していた笑実の思いは裏切られることになる。
「よし、じゃ喜多。話があるから、事務所へ一緒に来てくれ。猪俣笑実は、紅茶をゆっくり飲んでから戻って来い」
「……はい」
笑実の頭を、くしゃりを撫で回し。箕浪は席を立った。その後を追うように、喜多が腰を上げる。箕浪のせいで乱れた髪を手櫛で直しながら、笑実はふたりを見送る。どこか、含みのあった箕浪の台詞。恐らくは、自分に聞かせたくない話題なのだろうと、笑実は検討を付ける。箕波に言われたとおり、意識してゆっくりと。紅茶を口に含む。そして、思い出していた。自身のクローゼット内を。
「……私は何もしていません」
「わかったよ。じゃあ、パーティは箕浪に任せる。猪俣さんも、アルバイトの一環と思ってよろしくお願いします」
「……分かりたくありませんけれど。アルバイトなら仕方ありません」
笑実の返答を聞き、満足げに。数回頷いて見せた箕浪は、ひどく嬉しそうに笑実を見つめる。頬の赤みを隠すように、笑実はカップを口に当てる。だが、次に来るだろう箕浪の甘い言葉を。どこかで期待していた笑実の思いは裏切られることになる。
「よし、じゃ喜多。話があるから、事務所へ一緒に来てくれ。猪俣笑実は、紅茶をゆっくり飲んでから戻って来い」
「……はい」
笑実の頭を、くしゃりを撫で回し。箕浪は席を立った。その後を追うように、喜多が腰を上げる。箕浪のせいで乱れた髪を手櫛で直しながら、笑実はふたりを見送る。どこか、含みのあった箕浪の台詞。恐らくは、自分に聞かせたくない話題なのだろうと、笑実は検討を付ける。箕波に言われたとおり、意識してゆっくりと。紅茶を口に含む。そして、思い出していた。自身のクローゼット内を。