たなごころ―[Berry's版(改)]
ちょっと待てよ、との喜多の言葉に。箕浪は視線を会場内へ滑らせながら従う。ターゲットの姿は数分前に会場内から消えていることを確認していた。もちろん、その相手はこの会場に姿を見せてはいない。とりあえず、笑実の所在地を、安全を確認してから。箕浪は行動を起こそうと考えていた。
しかし――。
「……一緒にいるぞ、狐林学と」
喜多の言葉を聞き、箕浪はその場を駆け出していた。
※※※※※※
「笑実、どうしてここに?」
笑実は廊下に蹲りながら、背中で学の声を受け止めていた。
障害物のない廊下に、隠れる場所もなく。走り去るほど機敏な動きも、今の自分には望めなかった笑実は。携帯電話の入るクラウチンバッグを両手で抱きしめたまま、とっさに、ドアの裏側で蹲ったのだ。だが、幼い子供のかくれんぼではない。軽快な着信音に気付き、ドアから顔を出した学。笑実はあっけなく見つけられることになる。
恥ずかしさを感じながら、笑実は立ち上がり、姿勢を正す。後姿しかほとんど確認できなかった学を、正面から笑実は見ていた。見慣れない、スーツを身に纏った学を前にして。笑実は苦笑を浮かべる。
しかし――。
「……一緒にいるぞ、狐林学と」
喜多の言葉を聞き、箕浪はその場を駆け出していた。
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「笑実、どうしてここに?」
笑実は廊下に蹲りながら、背中で学の声を受け止めていた。
障害物のない廊下に、隠れる場所もなく。走り去るほど機敏な動きも、今の自分には望めなかった笑実は。携帯電話の入るクラウチンバッグを両手で抱きしめたまま、とっさに、ドアの裏側で蹲ったのだ。だが、幼い子供のかくれんぼではない。軽快な着信音に気付き、ドアから顔を出した学。笑実はあっけなく見つけられることになる。
恥ずかしさを感じながら、笑実は立ち上がり、姿勢を正す。後姿しかほとんど確認できなかった学を、正面から笑実は見ていた。見慣れない、スーツを身に纏った学を前にして。笑実は苦笑を浮かべる。