たなごころ―[Berry's版(改)]
 男性の両肩に掌を置き、視線は学へ向けて。箕浪は言葉を続ける。一見では分からないが、恐らく、強い力で男性は抑えられているのだろう。何度か立ち上がろうと試みているも、箕浪の制止によって、それは一度も成功していないから。

「いくら自社主催のパーティとは言え、あまりにも迂闊でしたね。招待客をもっと選別すべきだったのに。お気づきでしたか?今回招待した関係者の中に、今回貴社が手に入れようとした新薬の開発・治験に携わっている病院スタッフがいたことに」
「……だから、これは」
「分かりますよ。鼠淵製薬で生産、販売していた薬品の特許が数年後切れますよね。それに代わる新薬開発に焦っておいでなのは。かなりの販売シェアを誇っていた商品でしたからね。でもね……何度も言いますが、やりすぎです。学生を巻き込んだこと。まさか、貴方の一存でここまで話を進めたとは思ってませんよ」

 顔色を失った男性の顔を覗き込みながら、箕浪はトドメの言葉を告げる。

「ちなみに。この映像はある場所へライブ中継されています。私の眼鏡、分かりますか?小型カメラが仕掛けてあります」

 逃げられませんよ、との言葉を最後に。箕浪の手が、男性の肩から離れる。同時に、それまで、気丈に立っていたはずの学が、床に崩れ落ちたのだった。


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