たなごころ―[Berry's版(改)]
※※※※※※
テーブルの上に広げた資料を眺めながら、喜多は目の前に座る箕浪を視界の端で捕らえる。相変わらず、彼はソファーに足を投げ出した格好で、辞書のように分厚い本に夢中である。既に冷め切ってしまった紅茶を一口流し込み、喜多はワザと音を立てるように。それをソーサーの上へ戻す。箕浪の意識が多少なりとも自身に向けられているのを確認してから、喜多は箕浪に問いかけた。
「昨日の彼女、またここに来ると思うかい?」
「さあ、どうだろうな。正直、俺は興味がない」
ソファーへ浅く腰掛けていた姿勢を正し、喜多は意味ありげに片眉を上げる。喜多が与えた短い沈黙に、箕浪は億劫そうに視線を投げた。
「箕浪がわざわざ助けた女性だ。興味がないってことはないだろう」
「偶然、目に付いたからな。あのまま放置して、噂にでもなったら面倒だろう。店主として当然の行動だ」
「風呂を貸して、傷の手当までしてあげたのも当然の行動?」
「……どうせ、喜多はあの女を巻き込みたいんだろう。今回の件に」
「使えるかなと思ったんだけれどね。ま、彼女が来なければ終わりな話だけれど。もちろん、今回の件についてのプランは完璧だろう?箕浪」
「俺を誰だと思ってる」
「鰐淵が誇る、問題児」
「俺ほど男だ。欠点のひとつくらいないと、周りが僻むだろう?」
テーブルの上に広げた資料を眺めながら、喜多は目の前に座る箕浪を視界の端で捕らえる。相変わらず、彼はソファーに足を投げ出した格好で、辞書のように分厚い本に夢中である。既に冷め切ってしまった紅茶を一口流し込み、喜多はワザと音を立てるように。それをソーサーの上へ戻す。箕浪の意識が多少なりとも自身に向けられているのを確認してから、喜多は箕浪に問いかけた。
「昨日の彼女、またここに来ると思うかい?」
「さあ、どうだろうな。正直、俺は興味がない」
ソファーへ浅く腰掛けていた姿勢を正し、喜多は意味ありげに片眉を上げる。喜多が与えた短い沈黙に、箕浪は億劫そうに視線を投げた。
「箕浪がわざわざ助けた女性だ。興味がないってことはないだろう」
「偶然、目に付いたからな。あのまま放置して、噂にでもなったら面倒だろう。店主として当然の行動だ」
「風呂を貸して、傷の手当までしてあげたのも当然の行動?」
「……どうせ、喜多はあの女を巻き込みたいんだろう。今回の件に」
「使えるかなと思ったんだけれどね。ま、彼女が来なければ終わりな話だけれど。もちろん、今回の件についてのプランは完璧だろう?箕浪」
「俺を誰だと思ってる」
「鰐淵が誇る、問題児」
「俺ほど男だ。欠点のひとつくらいないと、周りが僻むだろう?」