たなごころ―[Berry's版(改)]
短い沈黙の後。再び眼鏡を掛けなおし、学は立ち上がった。顔を上げ、自分を見上げる笑実に、学は右手を差し出す。首を傾げ、学は無言で握手を求める。戸惑いながらも、笑実は目の前に差し出された手を取った。
不意に、握られた手が強い力で引き寄せられ、笑実は学の胸の中に納まる。笑実が感じる、久しぶりの学の香りだった。
「笑実、今までありがとう」
「うん。学も、頑張って」
触れることが出来ず、彷徨っていた両手を。笑実は学の背中に添える。3年間、馴染んできた学の感触。最後の挨拶をするように、笑実は右手で2回。学の背中を軽く叩いた。
言葉には出来ない想いを込めて。
※※※※※※
熱いシャワーに打たれながら、箕浪は鏡に映る自分を見つめる。
昨日。笑実と別れてから。箕浪は再びホテルの会場へと舞い戻っていた。ひとり、わにぶちにあるプライベートルームへ戻ったとしても。自分の胸に巣くった黒い影と一晩向き合う気にはどうしてもなれなかったからだ。考える暇もないほど、仕事に追われれば、多少気も紛れるだろうと考えての行動だった。
不意に、握られた手が強い力で引き寄せられ、笑実は学の胸の中に納まる。笑実が感じる、久しぶりの学の香りだった。
「笑実、今までありがとう」
「うん。学も、頑張って」
触れることが出来ず、彷徨っていた両手を。笑実は学の背中に添える。3年間、馴染んできた学の感触。最後の挨拶をするように、笑実は右手で2回。学の背中を軽く叩いた。
言葉には出来ない想いを込めて。
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熱いシャワーに打たれながら、箕浪は鏡に映る自分を見つめる。
昨日。笑実と別れてから。箕浪は再びホテルの会場へと舞い戻っていた。ひとり、わにぶちにあるプライベートルームへ戻ったとしても。自分の胸に巣くった黒い影と一晩向き合う気にはどうしてもなれなかったからだ。考える暇もないほど、仕事に追われれば、多少気も紛れるだろうと考えての行動だった。