たなごころ―[Berry's版(改)]
「そっか……」
「それに。言葉だけのことだったかもしれませんが。付き合ってきた3年間の中で。彼が私のことを本当に愛していたんだと、彼の口から聞けたことも、要因かもしれませんが……」
「そんな話まで?」
「ええ」
眸を見開き、続けて笑実に問いかけようとしている箕浪を無視し。笑実はソファーから腰を上げた。
「私、作業を続けてますので」
※※※※※※
照明の絞られた店内で。笑実は変わることなく、慣れた作業を続けていた。脚立に腰を下ろし、一冊一冊を手にとって。本が書架へ戻されるときの、ことりことりと言う慣れた音だけが。店内に響いていた。
その音が。急に止み、静寂が訪れる。笑実が手を止めたせいだ。
手にしていた本を膝の上に乗せ、笑実は自身の左胸の上に当てる。伝わってくる自分の鼓動は、平常のそれよりか幾分早い。眸を閉じて、笑実は深呼吸をする。原因は、自分でも分かっていた。無防備に向けられる背中も。他人には滅多に触れさせることのない髪も。口にする甘えた言葉も。箕浪が自分を信頼しているという証拠に他ならなく、その事実が笑実を喜ばせる。――ときめかせる。
自分を騙した相手だと言うのに……だ。、
「それに。言葉だけのことだったかもしれませんが。付き合ってきた3年間の中で。彼が私のことを本当に愛していたんだと、彼の口から聞けたことも、要因かもしれませんが……」
「そんな話まで?」
「ええ」
眸を見開き、続けて笑実に問いかけようとしている箕浪を無視し。笑実はソファーから腰を上げた。
「私、作業を続けてますので」
※※※※※※
照明の絞られた店内で。笑実は変わることなく、慣れた作業を続けていた。脚立に腰を下ろし、一冊一冊を手にとって。本が書架へ戻されるときの、ことりことりと言う慣れた音だけが。店内に響いていた。
その音が。急に止み、静寂が訪れる。笑実が手を止めたせいだ。
手にしていた本を膝の上に乗せ、笑実は自身の左胸の上に当てる。伝わってくる自分の鼓動は、平常のそれよりか幾分早い。眸を閉じて、笑実は深呼吸をする。原因は、自分でも分かっていた。無防備に向けられる背中も。他人には滅多に触れさせることのない髪も。口にする甘えた言葉も。箕浪が自分を信頼しているという証拠に他ならなく、その事実が笑実を喜ばせる。――ときめかせる。
自分を騙した相手だと言うのに……だ。、