たなごころ―[Berry's版(改)]
「重症だわ」
「俺のことか?」
突然聞こえてきた声に驚き、笑実の身体が跳ねる。拍子に。笑実の膝に置かれていた本が、音を立てて床に落ちた。慌てて、笑実は床へ手を伸ばす。
重なり合う、箕浪の掌。
逃げるように、引き抜こうとした笑実の手を。箕浪が引き止めた。眉を下げた箕浪と、戸惑いを顕にした笑実の視線がぶつかる。強い力で握り締められ、笑実の手が箕浪の手包み込まれた。
「……離してくれませんか?」
「さっきの笑実の話を聞いて。狐林学とどんな話をしたのかとか。いっそのこと、もっと、辛い目にあわせてやれば良かったとか。そんなどうしようもないことばかり考えてるんだ」
真剣な眼差しと言葉が、笑実の心に突き刺さる。視線を逸らし、笑実は眸を伏せた。数秒の沈黙。それを破ったのは。噛み締めた唇から、搾り出すように漏れた笑実の震える言葉だ。
「私だって……」
勢いよく顔を上げ、笑実は真っ直ぐ箕浪を見つめた。
「俺のことか?」
突然聞こえてきた声に驚き、笑実の身体が跳ねる。拍子に。笑実の膝に置かれていた本が、音を立てて床に落ちた。慌てて、笑実は床へ手を伸ばす。
重なり合う、箕浪の掌。
逃げるように、引き抜こうとした笑実の手を。箕浪が引き止めた。眉を下げた箕浪と、戸惑いを顕にした笑実の視線がぶつかる。強い力で握り締められ、笑実の手が箕浪の手包み込まれた。
「……離してくれませんか?」
「さっきの笑実の話を聞いて。狐林学とどんな話をしたのかとか。いっそのこと、もっと、辛い目にあわせてやれば良かったとか。そんなどうしようもないことばかり考えてるんだ」
真剣な眼差しと言葉が、笑実の心に突き刺さる。視線を逸らし、笑実は眸を伏せた。数秒の沈黙。それを破ったのは。噛み締めた唇から、搾り出すように漏れた笑実の震える言葉だ。
「私だって……」
勢いよく顔を上げ、笑実は真っ直ぐ箕浪を見つめた。