たなごころ―[Berry's版(改)]
「私がアルバイトに来るって聞いたとき、あれ程嫌がっていたのにですか?」

 箕浪の言葉に、頬を染めながらも。笑実は攻撃の手を緩めない。箕浪は、自身の膝の上に腰を下ろしていた笑実を再び抱きかかえ、ベッドへ移動させる。横たわる笑実へ覆いかぶさるように、両肘で自分の身体を支えながら。箕浪は笑実を真上から眺め、再び口を開いた。

「調査対象に関わる女だって分かってしまったんだ。簡単には自分のテリトリーには入れられないだろう。それに、意識の中で笑実を気にはしていても、踏み出す勇気が俺にはなかった。受け入れることも出来ずに、違うと否定し続けて目を瞑ろうと必死だったんだ」
「箕浪さん……」
「さて。俺に再び踏み出す勇気と幸せを与えてくれた猪俣笑実さん」

 箕浪は、極上の笑みを浮かべ問う。

「心だけじゃなく、身も俺のものになろうか?」

 ふたりは、ある程度の経験を重ねた妙齢の男女だ。互いの気持ちが通い立っていると分かった今、身体の関係を求められることはなんら不思議なことではない。あたりまえだと分かっていても、笑実は驚きを隠せなかった。眸を丸くし、答えに一瞬、躊躇する。だが、笑実の返事を待つことなく、箕浪は彼女の唇を塞いだ。
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