たなごころ―[Berry's版(改)]
12.契約内容
 通いなれた、わにぶちの隣に。その店はある。
 小さくも、様々な色で彩られた窓と。ブロンドで出来た烏のプレートが掛けられているドアを押して。笑実は淡い照明の灯る店内へ身体を滑り込ませる。彼女を出迎えてくれたのは。身体は熊のように大きいが、穏やかで甘い表情を浮かべるこの店のオーナ。店内には、カウンター席とテーブル席に数名の客の姿があった。

 箕浪に連れられ、笑実も何度かこの店を訪れたことがある。箕浪が初めて連れてきた女性とあって、笑実の顔をオーナーは一度で覚えたそうだ。
 わにぶちと探偵事務所のあるビルと、ビルが建つ土地は。現在、この店のオーナーの所有となっている。元々は、オーナーの父親が所有していたものだが、その父親が亡くなったことで、現オーナーが相続しているのだ。オーナーは他にも多数の土地を所有しているらしいのだが。詳しいことについて、笑実は知らない。
 わにぶちと探偵事務所は、箕浪の祖父が、古くから交友のあるオーナーの父親を巻き込んで始めたことだと笑実は聞いている。その関係は、世代を超えた今も続いているようで。箕浪と喜多、そしてオーナーは非常に仲が良い。年齢で言えば、オーナーが一番年上であるためか。3人が一緒に居る姿は一見、年の離れた兄弟のように見える。
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