狂奏曲~コンチェルト~
翌日、車に乗り込むとき少し考えた。
「お兄ちゃん、私、後ろに乗るけどいい?」
「あ?お前、お兄ちゃんを一人にする気か」
お兄ちゃんがむすっとする。
私は苦笑して、
「そんなこと言わないでよ。ほら、翼君乗ったとき、一人だと寂しいじゃん」
私の言葉に、お兄ちゃんは驚いたようだった。
「随分気にするんだな、翼のこと」
「……うん」
お兄ちゃんが運転席に乗り込んだ。私も続いて、後部座席に座る。
「否定もしないのか」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
どことなく、お兄ちゃんの声が硬い。
「は?どうしたって何が」
「翼君のことで私のことからかってたくせに、今度はからかわないの?」
「からかってほしいのか?」
「全然」
お兄ちゃんはにやっと笑った。
「もうすぐその翼君を拾わなきゃな」
「だから犬じゃないんだから」
私は笑った。
翼君のアパートは、いつも私達が通る道の一本違いの通りにあった。
こうやって一緒に大学に通うというのも、新でさえ一緒に通ったことがなかったせいか、なんだか不思議な感じだった。
そうやって、新のことを考えた瞬間、ずきりと胸が痛んだ。