狂奏曲~コンチェルト~

「授業が終わったら、工学部の図書室に行くよ」
「わかった」

 翼君は、少しだけ悲しそうに笑う。
 それを見た私は、ショックを受けた。

 翼君は、私といても、楽しくない……?
 そうだよね……
 翼君には、想ってやまない彼女がいるんだから。

「どうした?」
「え?」

 気づけば、翼君が私の顔を覗き込んでいた。
 その綺麗な灰色の瞳に私が映って、どきりとする。
 青く輝く、綺麗な瞳の中で、私は驚きに目を見張っていた。

「そんな暗い顔すんな」

 翼君はそう言って、私の髪に触れた。

「かなめには、笑顔が似合うよ」

 どきっ

 顔が赤くなるのが、自分でもわかった。
 そんな私の顔を見て、翼君が笑う。

 とても、愛しい人を見るような、とても優しくて穏やかな顔で――……。

 そのまま硬直していると、突然のクラクションに飛び上がって驚いた。

「俺がいるの忘れんな」

 そうやって横目で笑うお兄ちゃん。
 私は唖然としてお兄ちゃんを見た。
 こんなのは、お兄ちゃんらしくない。
 普通なら、私が男の人の名前を出しただけで嫌な顔をするのに。

「邪魔すんな」

 そうやって笑う翼君に、私は度肝を抜かれる。
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