狂奏曲~コンチェルト~

「じゃ、邪魔って……!」

 慌てふためく私を見て、翼君はとても暖かいまなざしをくれた。
 そして、ぽんっと私の頭を撫でた。

 その手が心地よくて、なぜか懐かしくて、嬉しかった。

「かな、泣かすんじゃないぞ~」
「馬鹿か、お前は」
「ちょっ、お兄ちゃん!?」

 翼君の反応が怖くて慌てる私。
 でも、翼君はお兄ちゃんの冗談にただ笑っていた。

 私が思っているよりも、お兄ちゃんと翼君は仲良しみたいだった。
 見えない絆みたいなものを感じて、どこか意外にも思った。
 お兄ちゃんは小さい頃から私にべったりだったのに、どうして私は翼君に会っていなかったんだろう。

「二人ともそんなに仲良しなら、もっと早くに紹介してくれれば良かったのに。お兄ちゃんってば、意外に水臭いんだね」
「「…………」」

 私の言葉に、なぜか車内の空気が凍りついた。

「そうだな」

 そう言ったっきり何も言わないお兄ちゃんに、黙ってしまった翼君。
 私、何か悪いことを言った……?

 不安に思って翼君の顔を伺った。

「翼君……?」

 眉間に皺に寄せ、考え込んでいるような翼君。
 不安で、私は翼君の手に触れた。

「っ……」

 翼君が、私の手を避けるように引っ込めた。
 そのことに、ショックを受ける。
 はっと、翼君が私を見た。

「ごめん」
「……ううん」

 私は、俯いて首を横に振った。
 それから大学に着くまでは、誰も一言も発さなかった。




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