狂奏曲~コンチェルト~
考え事をしながら向かった教室の入り口で、硬い顔のほのかと鉢合わせた。
「……おはよう」
「ああ」
こうやって、言葉を交わすのは随分久しぶりのようにも思えた。
「見たよ。本郷さんと一緒だったね」
「……ああ」
硬い顔だったが、ほのかは必死に言葉を選んでいるようだった。
「付き合ってるの……?」
ほのかの言葉に、俺は信じられないものを見るようにほのかを見た。
「わかってるんだろ? 俺達の関係が、どんなものなのか」
「…………」
ほのかは俯いて、小さく肯いた。
俺はほのかをおいて教室に入った。そして適当に選んだ椅子に座る。
ほのかは俺に続いて教室に入ってきて、そして迷ったようだったが俺の隣に座った。
俺はそれを横目で見た。
「……馬鹿だよね」
ほのかが、ぽつりとつぶやいた。
「なにが」
「結局、あたし翼から離れられない」
「…………」
そう、俺に告げるほのか。
ほのかの気持ちが痛いほどよくわかって、胸が痛くなる。
「わかってるよ。翼があたしを見ないことくらい。でも、少しくらい一緒にいさせて」
「……勝手にしろ」
俺が何を言っても、きっとほのかの気持ちは変わらないだろう。
震えながら、俺に懇願するほのかを哀れに思う。
ほのかの姿に俺の姿がかぶって見えたのも、事実だった。