狂奏曲~コンチェルト~

「どこがわからないんだ?」
「全部」

 かなめの言葉に、俺は唖然としてかなめを見る。
 かなめは申し訳なさそうに、

「本当にやばいんだってば」
「……それじゃあ、最初っからとにかくやるか」

 理学部に通ってるくらいだから、かなめは理系だ。
 昔から数学や化学が得意だったはずだ。

「ここは、こうなってるんだ」

 いちいち説明しながら、ルーズリーフに公式とポイントを書いてやる。
 それをかなめがまん丸の目で真剣に聞いている。

「あ、そっか。そうなってるのか」
「こういう問題にはこっちの公式を使うんだよ」

 かなめは納得したようにうんうん肯いた。
 俺はふっと微笑んで、

「かなめは要領がいいんだから、ちゃんと理解すれば大丈夫だろ」

 かなめは俺を見上げて、

「その理解するまでがカオスなんだってば」

 と、笑った。


 一通りの範囲を教え終わると、かなめはにっこり笑って、

「本当にありがとう! 翼君、教え方上手いね!」
「いや、どういたしまして」

 教え方が上手いんじゃない。
 かなめがどう言えば理解できるかを知ってるだけだ。

 かなめは何も覚えていないかもしれないけど、俺はかなめの全てを覚えているから。
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