狂奏曲~コンチェルト~


 俺は、そのまま身を乗り出した。

「?」

 手に入れたくて仕方がない愛しい人が、目の前にいるから。
 その頬にそっと触れて、それだけじゃ満足なんかできないから。

「っ!」

 俺はそっとその柔らかい唇に、己の罪深い唇で触れた。

「翼く……っ」

 かなめの声に、はっとして俺は離れた。
 首まで真っ赤になったかなめが、大きな目を見開いて俺を見ていた。

 しまった、と思った。

「なん……で……」

 呆然とつぶやくかなめに、俺はどう言おうか迷い――正直に言うことにした。

「ごめん。かなめが、あんまり可愛いから……」

 愛おしくて仕方がないから。
 力強く抱きしめたくなるから。
 俺は、いつもかなめだけを求めているから。

「翼君は、後悔しないの……?」
「え」

 かなめが、俺を咎めるでもなく真剣な顔で俺を見ていた。

「翼君は、私と一緒にいて後悔しないの?」

 かなめの言葉の意味がわからない。
 かなめは目を伏せて、

「翼君は、好きな人の代わりに私が一緒にいても大丈夫なの?」

 かなめの言葉に、言葉を失う。
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