狂奏曲~コンチェルト~

 かなめはわかっていない。
 俺がほのかに冷たくしていたのは、かなめだけを想っていたからだということを。
 俺の好きな人というのは、かなめなんだということは、かなめが知る由もない。

 抱きしめたい。
 俺のものにしたい。

「ごめんな……」
「え?」

 俺と再会したせいで、かなめはこんなふうに困っている。
 俺となんか出会ったせいで、かなめの人生はめちゃくちゃになった。

 もしも、もしも願いが叶うなら――、過去をなかったことにして欲しい。
 そうしたら、今でも幼馴染みとして、笑いあっていられたかな?
 恋人になりたいなんて、わがままは言わないから。
 ただ、普通に笑いあっていたかった……。

「なんで……泣いてるの……?」

 言われて目じりに触れれば、指先を涙がぬらした。
 俺は知らずに、泣いていた。
 かなめは痛ましそうに顔を歪めて、俺の顔に手を伸ばした。
 その柔らかな手が、そっと涙を拭った。

「涙はね、ストレスを減らしてくれるんだよ」

 かなめは哀しそうに、

「きっと、翼君は何もかも心に溜め込みすぎなんだよ。だからさ、たまには泣いたっていいじゃない」

 かなめ、そんなふうに言うなら、お前が俺を慰めてくれないか?
 俺の隣で、ずっと笑っていてはくれないか?

 そんな身勝手な想いに、吐き気がした。
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