狂奏曲~コンチェルト~

 この手でかなめを傷つけておきながら、そんな身勝手なことを思う俺。
 かなめが俺のことを忘れていることを良いことに、言い寄ろうとしている俺。
 汚くて、醜くて――何かが狂っている……。

 そのとき、かなめが俺の手を握った。

「また、変なこと考えてる!」
「……え?」

 かなめは怒ったように、

「翼君、そんなに自分を責めないでよ! なんで、そんな悲しい顔するの……?」

 そう言って俺の手を握る手に力をこめた。

「そんな悲しい顔しないで。私まで、寂しくなるから」

 かなめがぎゅっと俺の手を握ったまま俯く。

「私、翼君には笑っていて欲しいよ」

 その瞬間、俺はかなめを抱きしめていた。
 力いっぱい、かなめが壊れてはしまわないかと心配になりながらも、それでもぬくもりを感じていたくて。

 かなめは、抵抗しなかった。

「……私、代わりでもいいよ」

 ぽつりとつぶやいたかなめは、勘違いしている。
 だがそれでも、卑怯な俺は何も言わずに、ただ腕の中の温もりを感じていた。



< 122 / 301 >

この作品をシェア

pagetop