狂奏曲~コンチェルト~




 物理のテストは、翼君に教えてもらったおかげで良い点が取れた。

「お、良かったじゃん」
「あ、新……」

 私の答案用紙を覗き込む新は、自分のことのように笑ってくれた。
 そんな新の顔に罪悪感を覚える。

 別れることを選んでも、そのことを言い出せなかった。
 新にはまったく非がなくて、どういうふうに伝えればいいか迷う。
 でも、このままこの関係を続けても、結局私は新を裏切っているだけ。

 私はずっと、翼君のことばかり考えている。

 身を乗り出して、私にキスをした翼君。
 一体何を思っていたんだろう。
 私の姿が彼女とかぶったのかもしれない。
 翼君が私を見る目は、とても優しい。
 もしかすると、翼君が好きな彼女と私は似ているのかもしれない。

 そう思うと、嬉しいような、寂しいような複雑な気分になった。

「……」

 答案用紙を握り締めながら俯く私。
 新が首を傾げて私を見たのに気づいた。

「かなめ? 具合でも悪いのか?」

 新は、凄く優しい。
 きっと、私じゃなくてももっと他に良い人がいるはず。
 私は、翼君を放っておけない。
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