狂奏曲~コンチェルト~



 授業が終わった後、私は真っ直ぐ工学部の前に来ていた。
 入り口をぼにんやり見つめ、出てくる人達がちらりと私を見る。

「……本郷さん?」
「へっ」

 ぼんやりしていたところに声をかけられ、はっとして顔を上げると、訝しげに私を見る冴島さんと目が合った。

「こんなところで何してるの?」

 相変わらず、冴島さんの声には棘がある。
 それにひるみながらも、私は負けじと、

「翼君に会えるかなと思って」

 そうはっきりと言った。

 冴島さんと私は、好敵手。
 二人とも、翼君の想い人には勝ち目はないのかもしれないけれど。
 それでも、冴島さんに対すると気を張ってしまう。

「……翼なら、もうすぐ出てくると思うわよ」

 冴島さんは、そうぽつりと言った。
 それが意外で、私は目を丸くする。
 冴島さんは、眉をひそめて私を見た。
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