狂奏曲~コンチェルト~
行きたい所と言われて思いついたのは、水族館だった。
小学生の頃、風邪を引いた有紀無しで初めて二人で行ったのが水族館だったからだ。
もちろんかなめはそんなことは覚えていないだろう。
それでも、俺はもう一度かなめと水族館へ行きたかった。
「翼、帰りはちゃんとかなを送っていけよ」
「わかってる」
「お兄ちゃん送ってくれてありがとうね!」
開園時間に俺達を乗せてくれた有紀は、笑顔で去っていった。
「もし俺が運転できたら、俺が運転したのに。ごめんな?」
色が識別できない俺は、信号の光が認識できなかったんだ。だから、免許を取れなかった。
俺の言葉に、かなめは首を横に振った。
「気にしてないよ。今日は楽しもうよ。せっかくのデートなんだから!」
笑顔でそういうかなめ。
綺麗に髪の毛をまとめて、チュニックに七分のパンツをはいている。小物も可愛く揃えていて、色がわからないことをこんなに残念に思ったのは初めてだった。
「どうしたの?」
困ったようにかなめを見ている俺に気づいたのか、かなめがまん丸な瞳で俺を見た。
俺はかなめを安心させるように微笑んで、
「残念だと思ったんだ」
「え?」
「色がわかったら、もっと良い褒め言葉が思い浮かんだだろうなってな」
かなめはきょとんとして、自分の姿を見下ろした。