狂奏曲~コンチェルト~

「綺麗だよね、水って」
「ああ」

 他愛もない話をしながら、小さな水槽を見て回る。
 俺は水槽を笑顔で覗き込むかなめの顔ばかりを目で追ってしまう。
 あの頃とちっとも変わってない、愛おしい人の笑顔。
 繋いでいる手を、ぎゅっと握り締めた。

 手に入れたくて仕方ない愛おしい人。
 その人の手が、今このとき、俺の手中にあった。

 水中トンネルを通るとき、かなめが頭上を見上げながら立ち止まった。

「ここで魚達は幸せかな?」

 マンタが悠々と過ぎていく。

「ここなら、敵はいないし、餌だって時間になればでるけど」
「自由だと思っていれば、幸せなんじゃないか?」

 かなめが俺を見た。

「ここには荒波なければ、天敵もいない。ぬくぬくと生かされているのが自由だと信じているのなら、魚達は幸せだ」
「もし、自由じゃないって気づいたら?」
「一生を牢獄で過ごすような気分になるだろうな」

 弱肉強食もない、人間に作られた自然の中で生きる魚達。

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