狂奏曲~コンチェルト~
「その人には、好きな人がいるんだって。でも、叶わない恋なんだって」
どくりと、心臓が暴れだす。
かなめの静かな声が、喧騒の中も俺に届くのは、どこか俺達二人だけが異次元にいるような変な感覚だった。
「私、その人が寂しそうに笑うから、本当に笑顔にしたくて」
かなめ。
「おかしいかな? 好きな人がいるって、わかってるのに」
かなめ、俺はお前が……。
「でも、気になって仕方ない」
かなめ、その言葉の続きは……。
かなめは真剣な面持ちで俺を見て、
「だから、今日も無理言って、こうやって……」
かなめの言葉は、俺が突然抱きしめたことで遮られた。
一番後ろの列に座った俺達を気にする観客はいない。
「好きだ」
ずっと、ずっと、好きだった。
「かなめ、お前のことが好きなんだ」
「え……?」
ぎゅっと、かなめのことを抱きしめる身体に力が入る。
ここで離してしまったら、全てが夢で、なくなってしまうような気がして。