狂奏曲~コンチェルト~

「かなめ、俺の隣で笑っていてくれないか?」

 だから、俺の過去を知ろうとなんて思わないでくれ。

 かなめはしばらくじっと俺を見つめていた。
 そして、口を開いた。

「……本当に?」
「ん?」

 その問いに、俺はできるだけ優しく答える。
 かなめは続けた。

「私が笑うだけで、翼君は救われるの?」

 俺は肯いた。

 俺の過去なんて気にしなくて良い。
 俺の犯した罪なんか、思い出さなくて良い。
 お願いだから、ただ、俺の隣にいてくれるだけでいいから。

「わかった。約束する。私、翼君を笑顔にする」

 そう言って笑顔を見せてくれるかなめは、本当に綺麗で、可愛くて、愛おしい。
 後頭部に伸ばした俺の手にもかなめは抵抗しない。

 そっと頬を染めて目を閉じるかなめを、かつて俺は傷つけた。
 二度と、かなめを傷つけるようなことはしないと誓う。
 二度と、かなめの笑顔を奪うようなことはしないと誓うから。
 この柔らかい愛しい唇に触れる権利を、俺に与えてくれ。

 シャチのジャンプで湧き上がる歓声も俺達には届かぬまま、俺達はそっとキスを交わした。


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