狂奏曲~コンチェルト~





 一緒にいると、もっぱら私が話す側になる。
 翼は私の話をきちんと聞いてくれるし、反応してほしいときにちゃんと反応が返ってくる。
 過ごした時間はまだそんなにないはずなのに、なんだかずっと昔から一緒にいるような感覚に陥る。

 そんな風にして他愛もない会話をしながら歩いていると、翼のアパートの前を通りかかった。

 ふと、足が止まった。

「かなめ?」
「え、あ……ねぇ、翼の家寄っちゃだめ?」
「は?」

 口にしてから、無性に恥ずかしくなる。

「いや、だって……翼の家によれる機会なんて、そうそうないだろうし」

 お兄ちゃんと一緒に登校している私。シスコンのお兄ちゃんが、彼氏の家に行くことを許してくれるとは思えない。

「あー……いいけど」

 少しだけ困ったように、翼が言った。

「迷惑だったかな?」
「いや……」

 翼は困ったように、

「一応、男だから、俺」

 言われた意味がわからず、きょとんとする。
 翼は笑いながらそんな私の頭をなでて、

「かなめがあんまり可愛いから。惑わすなよ」
「えっ」

 翼は笑って、自分の部屋へと向かった。それに続く私。
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