狂奏曲~コンチェルト~

「かなにも幸せになってもらいたいけど、お前にも幸せになる権利くらいあるだろ」

 有紀の言葉に、俺は首を横に振った。

「俺は、その権利を失ったんだよ。かなめを壊してしまったあの日に」
「翼……」

 有紀が痛ましそうに顔を歪めた。

「お前……何を専攻してるんだ?」
「……電子工学」
「そうか、俺は言語の方だ」

 文系と理系だと、授業はほとんど重ならない。
 だからこの二年、構内で有紀を見かけることもなかったんだ。
 本当なら、卒業するまで出会わなくてもおかしくないのに、有紀とこの日再会したことは、俺に何かの予感を覚えさせていた。


「翼、大丈夫? いつにも増してぼうっとして……」

 授業中にほのかが心配そうに俺の顔をのぞいてきた。

「なんでもない」

 ほのかには悪いが、冷たい声が出る。
 本当は、こうやってほのかが俺の世話を焼くのが迷惑だ。
 俺にはかなめしかいないから、ほのかの気持ちには一生応えられない。

 有紀と再会して、よりいっそうかなめの存在感が俺の中で増幅された。
 かなめは今、どこでなにをしているんだろう。
 そんなことが気になりつつも、それを有紀には訊けない。
 俺には、その資格がないから。

 ぼうっとしているうちに、授業は終わり、ほのかに引きずられるようにして部屋の外に出た。
 ほのかは可愛らしい顔をゆがませ、

「翼、変だよ? 大丈夫?」

 と、尋ねてくる。

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