狂奏曲~コンチェルト~

「どうしたの?」

 挙動がおかしくなった俺を見たかなめが首をかしげた。
 その仕草もあの頃とちっとも変わっていない。

 かなめは何も変わっていない。
 俺のことを忘れただけで、自分が壊された事実も覚えていないのかもしれない。
 あの頃と何も変わらない笑顔で、ここに存在してくれている。

「かな、こいつと仲良くしてやってな」
「え?」

 突然、有紀がそんなことを言い出した。
 かなめがきょとんと有紀を見る。

「こいつ、友達少ねーの」
「おい」

 思わず非難するような声が出る。

「お兄ちゃん、失礼だよ」
「いいんだよ、俺と翼の仲だからな」

 あっけらかんとした有紀の様子に、脱力してしまう。
 そして、思わず笑ってしまった。

 思えば、長いこと笑っていなかったような気がする。
 だけどこうして有紀やかなめと一緒にいると、幼馴染み三人で過ごしたあの日々に戻れたような気がした。
 ずっと、鎧を着けていた心が軽くなる。
 こんなことをしている場合じゃないのに。
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