狂奏曲~コンチェルト~



 次の日、俺は理学部の前にいた。

 滑稽かもしれない。
 それでも、かなめに会いたかった。
 灰色に染まった世界の中で、かなめだけが俺の中で色づいているようにさえ思えたから。

 会えなくても良い。だた、一目姿を見られればそれでいいと思った。
 だが、待っているうちに自責の念がこみ上げてくる。

 いまさら、俺は何をやっている?
 隣にいたかなめに何もできず、想いを伝えることすらできず、そして傷つけた俺が、いまさらかなめになにができる?

 俺はため息をつく。
 あまりにも愚かで、目も当てられない。

 俺はその場を去ろうとした。

「二階堂さん?」

 運命が残酷なのか、味方をしているのかは俺にはわからない。
 だけど、俺の目の前には、驚いたように眼を見張るかなめがいた。

「おはよう」

 笑いかけた俺は、不自然じゃないだろうか?

「おはようございます。こんなところでなにしてるんですか?」

 かなめは、屈託のない笑顔で答えてくれた。

「君に会いたかった」
「えっ?」
「冗談だ」

 俺の言葉に、かなめは頬を赤く染めた。
< 56 / 301 >

この作品をシェア

pagetop