狂奏曲~コンチェルト~
「知ってる? つばちゃんの目って、ときどき青く光るんだよ。いつもは灰色なのに。凄く綺麗」
そうやって笑う、かなめの方が可愛いと、どうして俺は素直に言えないんだろう。
その目が好きだと、その髪が好きだと、かなめが好きだと、俺がどうして、言えないんだろう。
「あーあ、つばちゃん、格好良くなっちゃったから、なんか私置いていかれた気分だな」
「なんだよ、それ」
「知らないの? クラスの女の子はみんな噂してるよ。『二階堂君格好いい~♪』って」
両手をふりふりと、ぶりっ子のように動かしながら、かなめが笑った。
「お兄ちゃんも、中学にいたときはずっと皆に騒がれてたもんね。私の回りには格好いい人ばっかりで、なんか私だけ損だ」
「損って……かなめだって、可愛いだろ?」
搾り出すように、なんとかそう言った。
俺の言葉に、かなめは驚いたように俺を見た。
茶色の瞳がまん丸に見開かれている。
「つばちゃん、熱でもあるの?」
「何?」
「可愛いなんて、頭でも打ったの?」
本気で心配そうに言うかなめに、俺は嘆息した。そして、
「馬鹿だな。冗談だよ」
「えええええっ、それはそれでひどい!」
お前のほうが、ひどいだろ。
俺の言葉で、素直に喜べばいいものを。
なんで俺の言葉を疑うんだよ。
しかし、かなめはむふっと笑って、
「でも、つばちゃんに可愛いって言ってもらった。今日はいい日になるかも」
そうやって笑ってくれるなら、俺はそれでいい。