狂奏曲~コンチェルト~

「どうした?」
「ごめんなさい。もう大丈夫」

 頭痛は、一過性のものだったみたいで、すぐになんともなくなった。
 私はゆっくりと立ち上がった。

「ごめんね。いきなり頭が痛くなったんだ」
「大丈夫か?」
「うん、もう痛くないよ」

 良かった、と笑う翼君の顔を見て、赤面してしまった。
 男の人に、綺麗なんて言ったら失礼かもしれないけれど、翼君の顔は整っていて、本当に綺麗だ。
 あの青く光る灰色の瞳に見つめられたら、気が変になりそうになる。

 私には、新という彼氏がいるのに。
 他の人にときめいてしまっている事実に、罪悪感を覚える。
 でも、翼君と一緒にいる時間は、穏やかで、素敵な時間だった。



 翼君とは、あのあとすぐに別れた。
 家に着くと、お兄ちゃんに鉢合わせした。

「お、早かったな」
「早かったな、じゃないよ!」

 呑気にテレビを見てたお兄ちゃんに文句を言う。
 だけどお兄ちゃんは気にも留めない様子で、

「デートどうだった?」
「もうっ」

 こっちは、新に対する罪悪感でそれどころじゃないっていうのに……。
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