狂奏曲~コンチェルト~



 教室に入ると、

「毎日見せつけてくれるじゃん」
「あ? ほのか……」

 ショートボブのボーイッシュな女の子に声をかけられる。それが冴島ほのか。何かと俺に話しかけてくる。

「お前な、親父みたいなこと言ってんなよ」
「親父ぃ? 失礼だな!」

 ほのかは、さばさばとしていて、わりと付き合いやすい。

「翼は本郷さんと付き合ってるんでしょ?」

 さっきは、かなめにほのかと付き合ってるかと訊かれたな。
 今度は、こいつか。

「いや、ただの幼馴染みだよ」

 本当は、付き合ってるって言ってしまいたい。
 俺のものにしてしまいたい。

 だけど俺にはそんな勇気がないから、否定するたび自分で自分を傷つける。

「幼馴染みねぇ」

 含んだように笑うほのか。

「なんだよ」
「なんでもなーい」

 そう言ってほのかは自分の席へと戻っていった。
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