狂奏曲~コンチェルト~




 胸が痛い。

―― 好きな人はいる。

 とても真剣な瞳でそう言った翼君。
 それを聞いたとたん、苦しくなった。

 翼君を苦しめているものの正体に、気づいたような気がして。

――その人は俺を見てはくれないけど、愛おしくて、仕方がない。

 翼君は、どれだけその人を愛しているんだろう。
 きっと、彼女のことを想うあまり、身体に出るくらい傷ついてる。

「うっ……」

 さっきは、泣きそうな顔を見られたくなくて走ってきちゃったけど、変に思われなかったかな?

 胸が痛い。
 翼君の気持ちを考えると、胸が押しつぶされそうになるくらい痛い。

 気づけば、涙が出ていた。

 髪の毛が白くなっちゃうくらい、翼君は彼女のことを考えてる。
 彼女が翼君を見てくれないから、色を失ってしまうくらい、彼女のことを欲している。

 優しく笑って、私を撫でてくれた暖かい手。
 そんな優しい翼君は、彼女のために傷ついているんだ。

 可哀想だと思った。
 だけどそれ以上に、羨ましいと思った。
 翼君にそんなふうに想われている彼女が、羨ましいと思ってしまった。

 あの青く光る灰色の瞳で、優しく見つめられたい。
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